NOVEL

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- 真夜中の願い

九郎×望美


 白く細い指に九郎は口づける。
 指と指の谷間を舌先でなぞると、握り締めた手首がぴくんと震えた。
 同じ褥で抱き合い、互いの快楽を分け合った後――満ち足りた疲れを素肌に纏わせつつ過ごす時間は、ゆっくりと穏やかに流れていく。
 望美の手。
 それは剣を握り続けることで肉刺が出来、潰れ、やわらかかった場所が鉄に負けぬよう変化した『戦びとの手』だ。それを望美は気にしていて、「私の手、痛くないですか?」と問いかける事も一度や二度の事ではない。特に夜、こうやって二人きりで過ごす時間には、背に手を回すのを戸惑うようにしながら問いかけてくるのだ。
 そんな惑いも愛らしく感じるし、爪を立てらたりすれば痛みを感じることもあるが、触れられるくらいではどうという事もない。そもそも、大概そういう時は快楽の方が上回る状況になっているのが常で、全て終わってから「あぁ傷になったかな」と思う程度。それすらも、望美が与えた物となれば、戦場の傷とは違って存在すら甘い。
 そう――爪だ。
 剣の修業で何度も割れたそれは、武器を扱うものがなる歪な形へと変わりつつあるが、色合いは初めて会った頃から変わらない。桜の花びらに似た色彩を、彼はひそかに気に入っている。
 ふ、と息を吐き、小さく丸い爪の先を食む。衝動のままに濡れた水音をたてて吸い上げると、耳元に小さな笑い声が落ちてきた。
「もぅ、くすぐったいよ、九郎さん」
「我慢しろ」
 短く答えれば、抗議するように髪がひっぱられる。喧嘩する時のような力任せのものではなく、どこかしら愛撫めいた、悪戯な動き。絡めとる様な動きに導かれて視線を向ければ、翡翠色の瞳が九郎に笑いかける。
「ずっと右手ばっかり触って、飽きませんか?」
 呆れ混じりの声で聞かれた九郎は、不思議そうに瞬く。
「別に飽きはしないが」
 宮中にいるどんな姫とも異なる、荒ぶる手。
 この腕こそが自分の誇りだ――と九郎は思う。一見折れそうなほどに細いこの腕は、誰にも出来ぬ覚悟を抱えて剣を振るう。泣きながら、苦しみながら、ひたすら前を見据える白龍の神子。
 彼女を支え助けようと八葉の宝玉に誓った思いが、いつのまにか『誰よりも近い場所で』と変わったのは何時のことか。
 神子という肩書きを持つ乙女ではなく、たったひとり、彼の愛する少女と共に生きたいと願う。
 胸中に沸く想いを噛み締めながら指の関節に口づけると、望美の目元が薄く染まる。小さく喉を鳴らした望美の声が、どこか艶を含んでいた事に気付き、九郎は逆に問いかける。
「それは他の場所も触れということか?」
「なっ……違います!」
 夜目でも分かるほどに顔を赤くした望美は身を捩って離れようとするが、それより早く半身を起こした九郎が圧し掛かるようにして逃げ道を奪った。下肢を重ね、両腕で囲い込むように閉じ込めれば、恥じらいながらも望美の腕が九郎の首に回される。
 口づけの為に顔を寄せれば、さらりと零れ落ちる橙色の髪が望美の胸元に複雑な曲線を描く。肌をかすめ、褥へと落ちていく髪の動きに、知らず喉奥から甘い声が漏れた。
「…っ、ん……」
 ふるりと震える双丘に、九郎は僅かに目を細める。
「感じてるのか?」
 ――敏感だな、と豊かなふくらみの頂へと唇を寄せながら呟けば、既に何度か情を交わした肌はすぐに硬くしこり、九郎の舌を押し返す。
「それ…はっ、くろ…さんだから……」
「ああ、そうだな」
 肘をついて身体を支え、九郎は片手ででまろやかな曲線をなぞる。
 形のよい乳房、きゅっと括れた腰、武芸で鍛えられたしなやかな足。そして、その奥深くに隠された淡い茂み。汗で濡れたそれを指先で掻き分け、辿りついた潤みの中へと指を突き立てる。じゅぶ、と音を立てて指を受け入れた場所からは、望美の蜜だけではなく、少し前に九郎が注ぎ込んだ白濁が混ざり合って零れ落ちた。
「あっ、やぁ…んんっ!」
 深々と埋めた指で内壁を探れば、ぐちぐちと鳴る音に煽られて望美も声をあげる。首に回されていた細い腕はすがるように力が篭り、指先が九郎の髪を握り締めた。
「こら、ひっぱるな。……握るなら、こっちにしておけ」
 少し眉を寄せ、九郎は指を絡めるようにして望美の手を握る。
「ん……」
 促されるままに力を込める仕草が可愛らしく、九郎の抱える熱が更に上がる。太股に触れる欲望の存在に、望美は潤んだ瞳を九郎へ向けた。
「――まだ辛いかもしれないが……いいか?」
 可否を問えば、濡れた声を絶え間なく漏らす望美の頤が小さく上下に動く。
「へいき…………あ、はぁッ!」
 舌足らずな応えの語尾は、掠れた悲鳴に変わる。
 返事と同時に指を引き抜いた九郎は、間を置かず、自身の欲望で深々と望美を貫いた。ひと息に奥まで侵入し、その衝撃に震える腕中の肢体を強く抱きしめる。
 今はそれほど慣らしたわけではなくとも、胎内に残る残滓が潤滑剤の代わりとなって九郎自身を柔らかく受け止める。直に伝わる熱さに、九郎は低く声を漏らした。
「まるで吸い付くようだな……」
 奥深い場所を捏ねるように腰を動かすと、ぐち、と結合部から粘ついた音がする。
 確信に満ちた動きで、九郎の熱塊は望美の体内を突き上げる。一度、二度と強く穿ち、ゆっくりと抜きながら、先端で彼女の感じる箇所を擦り上げると、隘路から溢れた雫は、白い太股を伝わって褥を濡らした。
「や、あっ、ん…ふ――」
 甘く上がる望美の声は、次第に切羽詰った響きを孕み、逃し切れない熱が呼気に混じりだす。酸素を求めて喘げば、口づけの後が残る乳房が大きく揺れる。
「望、美……」
 繰り返す律動は互いの身体を快楽の階を上らせる。
 やがて一際高く声を放って達した望美の内部が激しく痙攣し、奥へ――と誘うような蠢動に導かれるまま、九郎も自身の欲望を開放した。


「もう、次はダメですからね」
 散々喘ぎ続けたせいか、嗄れた声で望美が言う。
「これ以上やったら、明日立ち上がれません……」
 怨霊退治だってあるのに、と呟く少女を胸元に抱き寄せ、九郎は小さく笑う。その振動が伝わったのか、望美の肩がぴくんと跳ねる。
「一日くらい休んだって構わんと言いたいところだが、そういうわけにもいかないしな」
「ええ、そうです。だからもう寝ましょう? 九郎さんの方がずっと忙しいんですし……」
 耳元で甘く響く声に頷き返しながら、九郎は静かに目を閉じる。
 そうしてみて初めて、己の疲労と眠気を悟る。伝わる体温は、とろとろとした眠気を誘う。理性を振り絞って瞼を持ち上げれば、既に望美も半ば眠りの世界に向かっているような表情だった。存外子供っぽい寝顔に、九郎も穏やかな笑みを誘われる。小さく欠伸をし、望美の髪に唇を寄せる。
「そうだな。でも――」
 このまま、抱きしめたまま眠りたい。
 眠りに落ちる寸前にねだる言葉を囁けば、愛おしい人の腕がゆっくりと持ち上がり、彼の願いは叶えられた。


||| あとがき |||

なんか手フェチっぽい九郎さんでした。
つーか「手が誇り」というワードを使いたくて書いたはずなんです。別にエロいらねーじゃんとか思ったりもするけど、まぁそこはそれ。
男女の絡みは、どこまで書いて良いのか悩みますね…。(←元々は、BL二次創作をしてたので…) あんまり書くとアレかと思って、ピロートークから初めて見た割に、結局(略)でした。

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