君を見つめるのは、彼だけにあらず
2009.12.01
「君を見ていた」のオマケ
- ヒノエ×望美
「最近、先輩の様子がおかしいんだよな」
「神子が?」
食糧の買い出しに出た譲に付き合って、勝浦の町を歩いていた敦盛は、緩やかに首を傾げた。
「この間、泣いてた日があっただろ?」
「ああ」
目を真っ赤に腫らした望美の顔を思い出し、沈痛な表情で頷く。
「翌日はもう普通にしてたけど、どこか無理してる感じがしてさ……」
「そう、だな。本人は気付かれまいとしているようだが、余計に痛々しい。――譲は優しいな」
「え?」
突然の敦盛の言葉に、譲は眼鏡の奥で目を瞬かせる。
「今日買った食材は、全て神子の好きなものばかりだな。きっと神子も喜ぶ」
にこりと己より丈高い年少の友人を見上げて笑う敦盛に、譲は慌てたように眼鏡の位置を人差し指で直す。
「そ、そうだといいんだけど」
しどろもどろに返事を返した譲は、そういえば、と更に言葉を継いだ。
「ヒノエもおかしいんだよな。俺たちに合流して一緒に過ごすのはいいけど、なんだか鬱陶しいというか……」
言葉を濁したのは、ヒノエが望美へまとわりついて離れない事だろう。
彼女に秘かに――というには周囲にバレまくりなのだが――想いを寄せる譲にとって、ヒノエのように口もうまく手も早い男が傍にいることが、苛立ちの原因になるのは当然ともいえる。
「す、すまない」
「なんで敦盛が謝るんだ?」
「いや……なんとなく……」
敦盛はヒノエの幼馴染で、弁慶ほどではないにしても、彼の心境を推し量るのが得意と言えた。
あの日を境に、ヒノエが神子を見る視線が変わったことに、敦盛はきちんと気づいていた。
もちろん、譲もだ。遊びではなく、本気の色を滲ませながらひたすらに向ける視線の意味を分かるのは、その色合いが、八葉全てが少なからず有するものだからかもしれない。
「だがそうだな。確かにおかしいか」
「そうだよ」
頷いて、譲は腕の大荷物を抱え直す。
「早く帰ろう。みんなたくさん食べるから料理も時間かかるしね」
「ああ。私も準備を手伝おう」
「頼むよ」
笑いあい、二人は並んで歩きだした。
- End -
||| あとがき |||
ささやか過ぎるオマケですが、本編の別視点ということで。

