彼と彼女の距離
2009.10.01
ヒノエの独白っぽい感じの話
- ヒノエ×望美
「ほんっとヒノエ君って、口が上手いよね!」
そういってくるりと短衣の裾を翻し、望美はオレとの距離をとる。
近づいても、最初は逃げないお前。
名を呼べば鮮やかな笑顔で振り返り、寄せられる視線は、八葉への信頼で溢れている。
その瞳に浮かぶものを、別の色に染めたくて、オレは想いを連ねた言葉を紡ぐ。
「オレは思ったまま、感じたままを口にしているだけさ。――ねぇ、姫君」
手を伸ばし、そっと彼女の袖を掴む。柔らかな布の端へ、口付けを一つ。
本気で逃げているなら、俊足の姫君のことだから、あっという間にオレの腕が届かないところまで行ってしまうはず。
触れられる距離にいるって事は、嫌がっていない証と解釈したっていいよな?
「どうしたらお前は、オレの言う言葉を信じてくれるんだろうな」
「し、信じてないわけじゃないよ」
溜息混じりに呟いてやれば、少し焦ったような返事が戻る。
「あのね、ヒノエ君が八葉としてすごく頑張ってくれていること知ってるし、怨霊退治とかに関することで嘘を言わない事をちゃんと知ってるよ。ただね、その……私の事を褒めてくれるのは嬉しいけど、お世辞ばっかり言われると、段々恥ずかしくなってきちゃうの!」
懸命に紡がれる言葉に笑いがこみあげるが、ここで笑ったら、姫君の機嫌を損ねるのは間違いないね。
だから精一杯真面目に、そしてほんの一滴の真実を混ぜて、傷ついたような顔を見せてやる。
「なんでお世辞なんて決め付けるんだよ」
くっと指先に力を込め、掴んだままの袖を引く。
強い力では無い。そんなことをしたら、彼女の衣が破れてしまうからね。
ただ、ほんの少しだけ――姫君がオレの方を振り返るための力を込める。
果たして、逸らされていた彼女の視線は正面からオレを捉え、ほんの少しだけ、彼我の距離が縮まる。
「だって、可愛いとか、綺麗とか、い…愛しいとか、そんなの似合わないよ~」
「似合うよ」
視線を絡めたまま、一歩を踏み出す。
「望美、お前は咲き誇るどんな花よりも美しいよ」
外見が美しいだけの女は、それこそ沢山いるだろう。だが、望美は内側から彼女自身のもつ――例えば生命力だとか活力だとか、そういったものが、綺羅綺羅と彼女を輝かせているのだ。
まるで太陽のようだと思う。
目が眩むことが分かっていても、それでもなお視線を奪われる。
「ねぇ、姫君」
もう一歩、彼女へ近寄る。
声をかけたときよりも、ずっと近く。
顔を傾ければ、その温かい吐息が届くほどの距離で、オレはありったけの想いを込めて囁く。
「何度口で言っても信じてくれないなら――」
直接、伝えるしかないよね。
そう嘯いてオレは、目の前で震える薄紅色の唇を塞いだ。
- END -
||| あとがき |||
ヒノエは手が早そうです(ぁ)。そんな感じで…(どんな)。
ヒノエはですねぇ、プレイしていた時、「技」を出す時のポーズが好きじゃなくて(…)攻略は後でいいや~と思ってたんですよ。
でも、他の人(っていうかリズ先生ルート)をやっている間に、もしかしてコイツ、実はえらい男前なんじゃないか!? と思いまして…。やったら、普通にハマりました。

