夏の熱-望美SIDE

2009.10.04
「夏の熱」の望美視点

- 弁慶×望美


 ――不意に視界が反転する。

 抱き寄せられたと分かったのは、頬が彼の着物に触れてからだった。
 ざらりとした布の感触。柔らかなコットンとも、さらっとしたポリエステルとも、どれとも違う肌触りの織物。
 肌を刺すように降り注いでいた陽射しが消え、代わりに与えられたのは穏やかな熱。
「どうですか?」
 問う声は静かだけど、頬に届く心臓の鼓動は、ほんの少しだけ私より早くて、そのリズムに自分も引きずられて行くのが分かる。
「……熱い、ですよ」
 吐く息も、触れた場所も、何もかもが太陽の陽射しより強く私を焼き尽くす。私は足元が揺らぐような思いを抱え、彼の衿元にしがみついた。
 薄い闇の中は、彼だけがいる世界。
 喘ぐように上げた視線は無言で塞がれた。目元を覆う指は、ほんの少しだけ薬草の香りがする。
 名前を呼ぼうとした私の口は、それを音にするよりも早く、彼の唇で封じられた。

- End -

 

||| あとがき |||

SSというにもおこがましいほど短い文ですね…。


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